2018年のアジア大会は、インドネシアのジャカルタとパレンバンで開催されました。歴代開催地の一覧を見ると、この大会に都市名が2つ並ぶ理由が気になります。
2都市開催の背景には、ジャカルタの競技施設に加え、パレンバンにも国際大会に対応できる施設と開催経験があったことがあります。当時のインドネシア青年・スポーツ相も、パレンバンを推薦した理由として、国際水準のスタジアムなどの準備状況を挙げています。出典:ANTARA・2014年9月24日の担当大臣発言
ただし、「2都市が選ばれた理由」と「当初の開催地ハノイから変更された理由」は別です。この記事では、施設・開催経験、ハノイの返上、開催年の変更という3つの点に分けて整理します。
各大会の開催地をまとめて確認したい方は、アジア大会の歴代開催地一覧をご覧ください。
なぜジャカルタとパレンバンの2都市だったのか
ジャカルタには過去のアジア大会の競技施設があった
ジャカルタは1962年にもアジア大会を開催しています。その大会に向けて建設されたのが、ゲロラ・ブン・カルノ(GBK)スポーツコンプレックスです。
OCA(アジア・オリンピック評議会)は、2018年大会に向け、この施設群の競技会場が改修されたと紹介しています。ジャカルタでは、過去の大会から引き継いだ施設が再び活用されました。出典:OCA・両開催都市の施設紹介
パレンバンも国際大会を開ける都市だった
パレンバンには、競技会場と選手村を備えたジャカバリン・スポーツシティーがあります。単にジャカルタの会場を補うために、施設のない都市が新しく加わったわけではありません。出典:OCA・ジャカバリンの紹介
2014年9月、当時の青年・スポーツ相ロイ・スルヨは、調整会議でパレンバンが開催地として推薦され、国際水準のスタジアムを持つことなどが評価されたと説明しています。出典:ANTARA・担当大臣の説明
また、大会直前の2018年8月、南スマトラ州のアレックス・ヌルディン知事は、2011年の東南アジア競技大会(SEA Games)の開催経験を挙げ、施設と国際大会の運営経験の両面から準備ができていると述べていました。出典:ANTARA・2018年8月6日の知事発言
これらの説明から、2都市開催は、ジャカルタだけに会場を集めるのではなく、パレンバンに蓄積されていた施設と経験も活用する体制だったと整理できます。
既存施設の活用と、新設・改修は並行していた
ここで注意したいのは、「使える施設があった」ことと「新しい整備が不要だった」ことは同じではない、という点です。
ジャカルタではGBKの改修が行われ、パレンバンでも大会直前の2018年7月に、ボート・カヌー、射撃、ボウリングなどの会場の完成を記念する式典が開かれています。出典:インドネシア内閣官房・会場完成の発表
したがって、「施設をそのまま使うだけで済んだ」と説明するのは正確ではありません。また、これらの資料だけから、2都市開催の目的を費用削減に限定することはできません。
当初の開催地ハノイはなぜ返上したのか
この大会は、最初からインドネシアで開く予定だったわけではありません。当初はベトナムのハノイで、2019年に開催する計画でした。
しかし、ベトナム政府は2014年4月17日、開催から撤退する方針を発表します。政府の説明は、主に次の内容でした。
- 経済状況が厳しく、限られた国家予算をほかの緊急性の高い事業に優先する必要がある
- 大会の総投資額や具体的な資金源について、合意ができていない
- 新施設の建設に見込んでいた資金の確保が不確実で、準備も十分ではない
単に「開催費が高い」というだけでなく、資金を確実に用意できるか、計画を実行できるかという問題を抱えていたのです。出典:ベトナム政府・開催撤退の発表
その後、インドネシアが代替開催を引き受けました。OCAの大会記録によると、2014年の第33回OCA総会で、ジャカルタ・パレンバン大会の開催都市契約が締結されています。出典:OCA・2018年大会の開催経緯
なぜ2019年ではなく2018年に開催したのか
開催地の変更に加えて、開催年も2019年から2018年へ変わりました。こちらの理由は、インドネシアの大統領選挙との重複を避けるためです。
OCAは、インドネシア側が2019年の大統領選挙を理由に、2018年の開催を希望したと記録しています。出典:OCA・開催年変更の説明
最終的に、第18回アジア競技大会は2018年8月18日から9月2日まで開催されました。出典:JOC・2018年大会概要
つまり、次の3つは混同せずに捉える必要があります。
| 疑問 | 理由・背景 |
|---|---|
| なぜハノイから変わった? | ベトナムが資金・準備面の問題から開催を返上したため |
| なぜジャカルタとパレンバン? | 両都市の施設を活用でき、パレンバンの準備状況や国際大会の開催経験もあったため |
| なぜ2019年ではなく2018年? | インドネシアの2019年大統領選挙との重複を避けるため |
※2都市の選定背景は、当時の担当大臣・知事の説明と、OCAの施設紹介をもとに整理しています。
まとめ
2018年アジア大会の2都市開催を理解するポイントは、ジャカルタだけでなく、パレンバンにも国際大会を支える施設と経験があったことです。とくにパレンバンの施設の準備状況は、当時の担当大臣が開催地推薦の理由として説明しています。
一方、ハノイからの開催地変更はベトナムの資金・準備面の問題、2018年への開催年前倒しはインドネシアの大統領選挙が理由でした。
「開催国が変わった経緯」と「2都市で受け入れた背景」を分けると、ジャカルタ・パレンバンという開催地表記の意味が分かります。
ほかの大会と比較する場合は、アジア大会の歴代開催地一覧へどうぞ。
参考資料
- OCA「Jakarta – Palembang 2018」
- OCA「Asian Games co-host cities welcome OCA Fun Run」
- JOC「第18回アジア競技大会(2018/ジャカルタ・パレンバン)」
- ベトナム政府「VN withdraws hosting of ASIAD」
- ANTARA「Indonesia siap jadi tuan rumah Asian Games」
- ANTARA「Gubernur: Sumsel siapkan Asian Games 3,5 tahun」
- インドネシア内閣官房「President Jokowi: Indonesia Ready to Host 2018 Asian Games」

